記憶に残る名前を狙った造語ネーミング。
実際には存在しない言葉なのに、伝えたい内容は良くわかる。
新しい言葉を開発して、マーケティングに活かして集客する。
これを造語ネーミングといいます。
造語はオリジナリティを出せるだけでなく、斬新さがあるのでマーケティング効果も高いと言えます。 アナグラムなどを使ったりして独自性は最大限に発揮できる反面、最も難しいネーミング方法でもあります。 下手なネーミングだと安っぽい感じになってしまい、何の会社かわからないなど「迷走」した名前になってしまうこともあるのでご注意を。
何種類か造語テクニックはありますが、一番スタンダードなのはいくつかのキーワードを足して新しい造語をつくる方法です。
例えば「タウンワーク」。 無料仕事情報誌です。特にタウンワークがチカラを入れているのは地域別に仕事情報を載せているという点です。 地域性が高いキーワードの「タウン」と仕事を意味するキーワード「ワーク」を足した名前です。
「シティ」というワード洗練されていて少しクールなイメージを連想しますが、「タウン」というキーワードなら「あなたの街の…」という地域性を表に出すことが出来ます。
つまり、「タウンワーク」という名前から連想させられるイメージは「あなたの街のお仕事情報誌」といった感じでしょうか。
家から離れたところの仕事を探す人より断然、自宅から近距離で楽に通勤出来るところを探している人が多いのです。 その分、需要が増えるのは必然です。 「タウンワーク」はそれらのニーズに応えた商品名というわけです。
ターゲットを絞ってマーケティングしていることがわかりやすいネーミングですね。 ネーミングをするにおいて一番大事なことは「連想させるイメージ」です。 次に「洗剤」のネーミングをみてみましょう。
食器用洗剤、洗濯用洗剤、お風呂用洗剤、トイレ用洗剤、洗車用洗剤など…一口に洗剤といっても様々な種類があります。 食器洗い洗剤の場合、「チャーミーグリーン」「ファミリーピュア」などの名前が使われています。
これらのキーワードをみてみると、 「チャーミー(魅力的)」と「グリーン(緑)」
「ファミリー(家族)」と「ピュア(純粋)」
など日本語に直訳したらバラバラのキーワードを足したネーミングです。
しかし、連想するイメージはやわらかくて清潔な感じで「安心感、安全、肌にやさしい」などのキーワードが暗に秘められています。
食器は直接口に触れるものだから化学薬品というのを前面に押し出すようなことはしていません。家族の安全を考えるお母さんの視点に合わせたネーミングです。
一方、お風呂用洗剤は「バスマジックリン」「カビキラー」などです。
「バスマジックリン」は
「バス(お風呂)」
「マジック(魔法)」
「クリーン(清潔)」の三つのキーワードを合わせた造語です。
「カビキラー」の場合は「カビ」と「キラー(殺し屋)」です。
食器洗い洗剤に比べたら「安全、やさしさ」よりも「汚れを取る」という部分が強く出ています。
「カビキラー」は化学薬品というイメージも強くなっています。
それに対し「バスマジックリン」はマジックとクリーンを合わせた造語「マジックリン」というコミカルなネーミングなので記憶に対しての定着も高いのです。
造語の作り方はまず「キーワード探し」から始めることです。 どんな商品なのか、その商品を使うことでお客様にどんなメリットがあるのか。
それらをキーワードに変換して伝えることが出来るか、出来ないかで造語ネーミングの明暗は分かれてきます。 「バスマジックリン」や「カビキラー」などは誰がみてもどんな商品なのかわかるはずです。
商品や社種によって変わってきますが、大体10個から20個くらいキーワードを見つければ十分だと思います。 たとえバラバラのキーワードであっても人間には連想能力が備わっているので、それをうまく連想させるキーワードを見つけることがファーストステップです。
ネーミングはキーワードの結合が重要。
良いキーワードを見つけても、それらをうまく結び付けないと名前は完成しません。通常は2個のキーワード、多くても3個のキーワードを結びつけていくのです。 このキーワードの結合が一番気をつけなくてはいけないところです。
先にも紹介した「バスマジックリン」でもそうですが、キーワードの語尾の部分と次にくるキーワードの一文字目を省略するというテクニックです。 このネーミング方法は簡単でとても有効です。
あと、厳密には造語ではないのですが、記憶定着を向上させるために常用語を別の漢字で変換するというのも最近の主流です。
常用語である「有名人」に引っ掛けて記憶の定着を高めています。
「名人」=「ある特定の分野で優れた技能を持った人」と「お湯」を結びつけて、うまく「給湯器」という連想を促す良いネーミングです。
このように分析してみると「技あり」な感じがしてきますが、基本は「ダジャレ」です。 ダジャレは親父ギャグの一環として煙たがられていますが、ネーミングの世界では「技あり」として花開きます。 ダジャレを考えるのはお得意ですか?(笑)
キーワードの結合が終えたら、いよいよ最後の工程に入ります。 最後にしなければいけないことは「テスト」です。 テストする内容は2つです。
- 一つ目は「インプレッション(その名前から受ける印象)」
- 二つ目は「記憶定着度合い」
同僚や友人などに何の気なしに考えたネーミングを言ってみて、数日してから尋ねてみる。これだけで多くのことがわかります。
例えば、50%の人が覚えてくれていたらそれは「記憶定着度」に関してはかなり期待が持てます。記憶定着度が高いと集客も見込めます。
問題はインプレッションです。 インプレッションを聞き出すのが難しいのです。 根気よくアンケートを取ったり、すでに売れている商品名や会社名と比較するのがいいでしょう。同時に法則性も見えてきます。
造語ネーミングに関してはかつてと今では手法が異なってきています。 現在では関連する「キーワード」同士をくっつけるのが主流ですが、創業何十年も経った大企業などの社名は創業者の名字を入れたりと今とは少し違います。
例えば「サントリー」。 創業当時に発売していたポートワインの「赤玉」のマークを太陽(SUN)に見立てて創業者の鳥井信治郎氏の名字の「トリイ」を組み合わせて社名を「サントリー」にしたと言われています。
「ブリヂストン」は創業者、石橋正二郎氏の姓を英語に直訳し「ストーンブリッジ」としたところ、語呂が悪いとそれを逆さにしてつくられた簡単なアナグラムによる造語です。
このようにちょっとしたシャレから「何だか印象に残る名前」が生み出されて、世界的に有名な企業になっていくなんてなんだか面白いですよね。